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FOURTH DAY

 今朝、目覚めるとひとりでした。久しぶりにシングル・ルームでゆっくりと眠れました。
 窓を開けると、冷たい空気が流れ込んできます。胸いっぱいに吸い込むと、日本では味わえない、何とも言えない薫りを感じました。空は、また曇り。朝から晴れていたのは、ドライヴ第1日目だけです。この天気では、ここ、チナールに滞在しても余り有意義ではないようです。ハイキングをするにしても、雨が降りだしそうですし、スキーやスノーボードはロープ・ウェイで山に登れば出来そうでしたが、両親が滑れないので、なんにしろ、今日は移動日という事にした方が良さそうです。ジュネーヴのホテルで見た週間天気予報によると、今日は雨が降る事になっていましたから、今日のドライヴは気をつけないと…。
 着替えを持って、階下のシャワールームへ。今回の旅では、朝にシャワーを浴びるのが定例になっていました。

 AM8:00、起きてきた両親と朝食を取りにレストランに行くと、中にコーヒーを飲む軍人さんがいました。カウンターのおじさんと談笑していましたが、やっぱり私たちは軍服に慣れていない為か、何も無いのに物々しい雰囲気を感じてしまいます。
 テーブルに着き、レストラン中央近くのテーブルに用意されている朝食を取りに行きました。今朝の朝食は豪勢な物でした。シリアルは何種類もあり、パンやジャムも数種類ありました。勿論、ハム、チーズ、ヨーグルトもあり、すべて取り放題です。豪華な朝食のおかげで、同じ部屋に軍人さんがいることなど忘れてしまって、食事を楽しむ事が出来ました。
 この朝食が付いて、シャワー共同で一泊ひとり40.00SFRとは、本当に安いと思います。

 AM9:00、チェック・アウト。時折、フワフワと小さな雪が舞っている曇り空の下を走り出しました。今日の予定はエンガディン地方へ、故新田次郎氏の著書「アルプスの谷アルプスの村」で、氏が訪ねたマロヤの朝焼けが見たくて旅程を組んだのです。
 チナールの村を後にし、昨日、走った道程を逆走します。やっぱりスイスの朝は早いのか、通勤の車はもう走ってない様です。スイスを旅行していると、朝早く、AM7:00頃から働く人をよく見かけますが、スイスは本当に早くから1日が始まります。昨日見た、絶壁にへばりついた道も、すごい事に変わりはありませんが、帰りはまた違った風に見えます。山脈の下のローヌの谷が、透明感のある空気に鮮やかに映ってきました。
 グルグルとヘアピンカーブを幾つも下り、ローヌの谷底に出て、国道「R9」(シエールから東は、高速道路は終わり、国道とつながっている)を右折、すると、母が少し気分が悪いと言いました。たくさんのヘアピンカーブを下ったので車に酔ってしまったのですが、すぐにパーキング・スペースに車を停め、外に出てしばらく休息すると、スイスの冷気が効いたのか母の気分は短時間で快復。すぐに再出発する事が出来ました。
 シエールから東の国道は、渋滞という言葉とは無縁のように、まるで高速みたいに快適でした。この道なら、母も車酔いする事はありません。ポツリポツリと降りだした雨粒の当たるフロントガラス越しに見える、前方左の山の斜面に何か大きな白い建造物が見えました。近づくにつれ、それが何だかはっきりして来ました。巨大なパラボラ・アンテナです。何のアンテナでしょうか?通信衛星への送信アンテナでしょうか?とにかく、ちょっと不思議な光景でした。

 降りしきる雨の中、まっすぐな並木道を走ります。左手にローヌ北岸の山々の谷間が見えてきました。そこから、首都ベルンからイタリアへ貫けるスイス国鉄の線路が、山の中腹の斜面をゆっくりと下りながら走っているのが見えました。そのままブリークまで下っていくのです。スイスには、幾つかの交通の要所があり、ブリークはその最も重要な要所のひとつです。

雨の国道「R9」

 ブリークにはAM10:50に到着。駅前の駐車場に車を停めた頃は、雨はしとしとと降っていました。また、駅でトイレを拝借し、久しぶりに訪れた駅構内をブラブラしました。何度となく訪れている駅なので愛着があります。
 正面口の様子が少し変わって、新しくなっていました。小さなスーパーみたいなお店が出来ています。そのお店の中で、ジュネーヴで見かけたアイス・バー、「Magunam」を発見しました。チョコレートがけ、クランチつき等、4種類あって、サンドイッチ、乳性から作られている清涼飲料水、「リベラ」と一緒に3種類購入。ちょっと早かったのですが、買った食料品を車に持ち込み、ランチにしました。
 帰国後、母は今回の旅行で一番美味しかったのは、お昼に食べていたサンドイッチだったと言いました。不健康だとは思いますが、お昼はほとんどサンドイッチでした。しかし、それが最も美味しかったとは…。
 ところで「Magunam」ですが、私が食べたのは「クラシック」というタイプで、やっぱり想像通り、チョコレートの濃厚な味わい。美味しくてボリュームたっぷりでした。

オーバーワルトのカー・トレイン駅

 ブリークから東のローヌの谷は、西側よりも狭くなり、ゆるい登りになりました。FO(フルカ・オーバーアルプ鉄道)の線路とつかず離れず、たくさんの小さな街を通り過ぎていきます。このあたりの左手の山は雨で曇っているため見えませんが、その向こうにはヨーロッパ最長のアレッチ氷河が流れています。
 道路標識でフルカ峠は閉鎖されている事が分かっていましたので、カー・トレインに車を乗せて峠を越えることにしました。カー・トレインにはフルカ峠の手前、オーバーワルトから乗ります。ブリークから1時間もしないうちにオーバーワルトに到着。カー・トレインの駅に着くと、少し離れた空きスペースに車を停め、すぐに切符を買いに行きました。
 30.00SFR。やっぱり、車1台だから、高いなぁ…。でも、人数で割ればそんなに高くありません。多く乗ってれば乗ってるほど安くなります。
「次の列車は何時ですか?」
「1時ちょうどです。」
後、30分ほど時間がありました。雨のせいでかなり肌寒く、冷えてきてもいましたので、行ける時に行っておこうと、またトイレに行きました。シャモニの二の舞はごめんです。のんびりしていると、ゲートの向こう側に車がたくさん並んでいるのを発見しました。
「さっきはあんなに並んでなかったのに…。」
そこで慌ててしまうのが日本人です。私たちはすぐに車に乗り込み、ゲートを通り抜け、列に並びました。
 ゲートを通るには、車をゲートの前で停め、チケットを機械に通さなければなりません。しかし、まったく慌てる事はなかったのです。あとで、ちょっと恥ずかしくなりました。
 並んでいる車は皆エンジンを切っていました。スイスやドイツでは、踏切が閉まって止まるような時でも、こまめにエンジンを切ります。環境問題について、他のヨーロッパ諸国でも同じだと思いますが、日本ではどうでしょうか?
 私は、ほとんどの車がエンジンをこまめに切ってはいないと思います。それどころか、夏や冬などに、暑いとか寒いというだけでエンジンをかけ、エアコンを作動させて停車している車やトラックなどを多く見かけます。エネルギーの無駄遣いであることは言うに及ばず、自分たちの出している排気ガスが地球の環境を破壊しているのだという事など、まったく知らないといった風です。地球はひとつで、世界中がつながっているのです。私たちが日本で汚した空気は、私たちの健康はもちろん、この美しいスイスの、そして世界中の自然をも破壊しかねないのだという事を忘れないで欲しいのです。

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